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『国家非常事態宣言』下のアメリカの生活について《その1》

去る3月13日、私が家族と生活しているここアメリカで、コロナウイルスの感染拡大を受けて、トランプ大統領により『国家非常事態宣言』が宣言されました。

国家の非常な事態であり、この宣言によって州をまたいで国家レベルの施策・対応が可能になるというもの。

この事態を受け、アメリカでの日常生活にいったいどのような変化が生じているのか、生活者の目線で記録していきます。

 

いつもの通り、師範と門下生の会話形式でお送りします。

シリーズでお伝えする第一弾になります。

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師範

『コロナウイルスで世界中が影響を受けている。一刻も早い正常化が望まれる』

 

門下生

『そうですね。私の住むアメリカでは3月14日現在、全州で感染者2610人、死亡者56名となっています』

 

師範

『日本と似て、検査自体の実施件数が非常に少ないこともあり、

実際の感染者数、そして死亡者数はよく分からない、というところが本当だろう』

 

門下生

『おそらく、そうなのでしょう。

一方でインフルエンザによる死亡者は今シーズンで2万人を越えており、

実はこの中にもコロナ感染者が含まれているのでは、といった

ジャーナリストの記事も話題を集めています』

 

師範

『検査により断定されるケース以外は正式なデータとして挙がってこない以上、

本当に正しいデータは闇の中。

だから真相がわからず、また新型でありワクチンが現時点では存在しない、

という正体不明のものと対峙している恐怖・不安というものが

世界を覆っているような状態に見える』

 

門下生

『そうですね・・・私ももちろんその一人。

公式なデータは日々チェックしているものの、

一方では公式データに出てこない感染状況を想像しては、

不安を感じている・・・そんな気がしています』

 

師範

『アメリカでの実際の生活にどのような変化が生じている?』

 

門下生

『スーパーの棚から、衛生用品をはじめとした生活必需品の在庫が一気になくなっています。

 

私はテネシー州の片田舎に住んでいます。

全米大手チェーンのWarmart、そして地元に根付いたチェーンのIngles、Foodcity、この3店舗を日常的に使っていますが、

どこも同じように、

トイレットペーパー、サニタイザー、家庭用消毒液、(ワイプ式や、スプレー式など含む)石鹸系、市販パン、鶏肉・牛肉など生の肉、冷凍ピザなどの冷凍食品・・・

このようなものが圧倒的に品薄になっています

どれもアメリカ人の一般家庭にとって生活必需品、ということが分かります』

 

師範

『生活必需品が手に入らなくなったらどうしよう、

その様な不安感からの消費行動、これは世界共通のように感じられるな。

飛び交う情報の中には、信ぴょう性の高いもの、そうでないものがあると思うが、

たとえ信ぴょう性は低くとも、

自分の生活にとって無くなったら不安、と思うものはとりあえず買っておいたほうが安心、と消費者は考えてしまう。

それはデマに踊らされている、というものではなく、必然の消費者心理と考えたほうが良いだろう。

決して止められるものではないような気がする』

 

門下生

『ええ、私もとにかくトイレットペーパーを大量購入しました。

この行動が正しいかは分からないものの、

結局このような行動をとってしまうものです。

この先、事態がどうなってくるか分からない。

この先、生活必需品がどのような在庫状況になってくるか分からない。

だからこそ、

念のため、とりあえず、安全サイドで・・・

このような行動に出てしまいますね・・・

一部の買い占めを行う人たちを非難できない状況です・・・』

 

師範

『アジア人としての住み心地については何か感じるところはあるか?』

 

門下生

『実は、外で米人からの視線が気になってしまう自分がいます。

このような事態になる前は、決して感じなかったものです。

自分の勝手な思い込みだけかも知れません。

分からないのですが、

明らかにアジア人の顔をした自分を、

米人が一体どのような見方をしているのだろう。

そう不安に思うところから、視線が気になってしまう自分がいるのです。

多くの人は多様性に寛容だと信じていますが、

白人至上主義者も少なからず存在している、という事実もあります。

アジア人がウイルスを持ち込んだ・・・

明らかな態度・行動に移さないまでも、

その様に感じている人は一定数いると思うのです』

 

師範

『難しい問題だな。

君は数年もアメリカで生活し、その間帰国していないじゃないか。

君が実際にウイルスを持ち込んだ可能性は限りなく皆無。

にも拘わらず、

アジア人として一括りに見られる宿命を、

背負いながら生活せざるを得ないのだな』

 

門下生

『ええ。他人の考えは決して変えることが出来ませんから。

その様な視線は、受け入れ、そして毅然として気にしない、

そんな心構えで生活していますが。

まあ、自分の思い過ごしかもしれないわけですが・・・』

 

師範

『意識してしまうだけでも、小さなストレスが生じて、積み重なってしまうな』

 

門下生

『はい・・・妻や小さな子供たちにも、

少なからずストレスを感じさえてしまっているでしょう』

 

師範

『会社の上司や同僚はどう反応している?』

 

門下生

『ええ・・・

実際、人によってとらえ方が異なり、そのばらつきが大きいなと感じるところがあります』

 

師範

『というと・・・?』

 

門下生

『不要不急の用事なく、2月中旬から2週間も日本へ一時帰国していた人、

非常事態宣言の出される直前に、ニューヨークへ個人旅行へ行ってきた人、

国家非常事態宣言が出された今でも、

国内旅行など問題ないでしょう、と

余裕をかましている人・・・・

その様な日本人が、役職者も含めています。

私にとっては、

あまりにも緊張感が不足しているのでは・・・と

とても疑問を持ってしまいます』

 

師範

『うむ。

会社が自己責任の方針を打ち出しているのかも知れないが、

先に君が述べたように、

アジア人として一括りに見られる可能性、

というものも自覚して考えると、

軽率な行動はとらないほうが賢明だろう。

個人の軽率な行動が、

同じアジア人の印象にも影響を与えてしまう、

という意識が、

海外で外国人として暮らす人には求められるのだろうな。

 

その様な、想像力が今必要なのだ』

 

門下生

『なるほど・・・

想像力ですか・・・』

 

《その2に続く》